講義
基礎科目
人文情報学概論Ⅰ (S1+S2)
担当|大向 一輝 / 塚越 柚季
日時|水曜日5限(16:50-18:35)
座学と実習を軸として、人文情報学の基礎的な考え方と実際に必要な技術の学び方について学ぶ。
⇒授業の成果物「デジタル・ヒューマニティーズ入門」日本語訳(2012年度)
2024年度シラバス(抜粋)
長らく紙媒体に依拠してきた人文学は、今や様々な面でデジタル媒体に依拠せざるを得なくなりつつある。人文学の基礎である資料批判の手法は主に紙媒体に対して培ってきたものであり、人文学が学問としての基礎を維持し続けるためには、デジタル媒体の普及という新たな状況に対して資料批判の手法を再構築しなければならない。そして、この過程を通じて、人文学は、資料とそこから得られる情報の意義を再考するとともに、デジタル媒体の示す広汎な可能性に沿って自己を再規定する必要がある。人文情報学(Digital Humanities)は、こうした課題解決のため、人文学研究者と情報学研究者が協働する場として世界で展開しつつある新しい枠組みである。
本授業では、デジタル媒体をも対象とする新たな資料批判の力を身につけることを目指し、この人文情報学の中心的課題である、デジタル媒体時代における人文学にとっての資料と情報に関する問題系の理解を深めるとともに、国内外で取り組まれつつある種々の具体的事例を通して人文情報学の現状を把握し、デジタル媒体に適切に向き合う構えを自律的に形成できる人文学研究者としての素地を涵養する。
各回のテーマは以下の通りである。個々の技術の理解・習得だけでなく、これらの技術が内包する課題や限界、普及の経緯についても触れる。履修者自身が人文学と情報技術の関わりを批判的に捉えつつ、研究活動に生かせるようになることが目的である。なお、各回で紹介するツール・システム等のうち主なものについても挙げているので参考にされたい。
イントロダクション:定義と歴史
デジタル人文学におけるデータ(XML・TEI・RDFなど)
テキスト分析(Voyant Tools・KH Coder・Google/NDL ngram viewerなど)
ネットワーク分析(Palladio・Gephi・Cytoscapeなど)
画像・音声・映像(IIIFなど)
空間・時間(GIS・3D・HuTimeなど)
AI(大規模言語モデル・OCRなど)
デジタル人文学の研究事例
メタデータと知識(書誌情報・Zoteroなど)
デジタルアーカイブ(Omekaなど)
知的財産権(著作権・Creative Commonsなど)
技術標準(文字コード・ISOなど)
ワークショップ・まとめ
人文情報学概論Ⅱ (A1+A2)
担当|大向 一輝 / 塚越 柚季
日時|水曜日5限(16:50-18:35)
「人文情報学概論Ⅰ」に引き続き、方法論のコモンズ(Methodological Commons)としてのデジタル人文学の理解を深めると同時に、実習を通じた各種スキルの習得や、自身の研究テーマに適した方法論の検討を行う。
⇒授業の成果物
「歴史研究のための財務記録史料マークアップ手法」日本語訳(2014年度)
テキスト分析ツールVoyant-toolsの日本語インターフェイス(2016年度)
欧州DARIAHによるDHのMOOCへの日本語字幕 (2018年度)
⇒授業から発展したDH活動報告
2024年度シラバス(抜粋)
各回のテーマは以下の通りである。実習や議論を通じて履修者自身が人文学と情報技術の関わりを批判的に捉えつつ、研究活動に生かせるようになることが目的である。
イントロダクション:方法論のコモンズ
データへのアクセス(実習)(データベース・デジタルアーカイブなど)
テキストデータの加工(実習)(正規表現など)
テキストマイニングと可視化(実習)(Voyant Tools・AntConcなど)
テキスト構造化(実習)(XML・TEIなど)
ネットワーク構造化・可視化・分析(実習)(Palladio・Gephi・Cytoscapeなど)
知識構造化(実習)(RDF・知識グラフなど)
時空間構造化(実習)(GISなど)
デジタルアーカイブ(実習)(Omekaなど)
デジタル人文学分野で研究を行うには:導入
技術的な制約と可能性
研究態度としてのコラボレーション
デジタル人文学分野で研究を行うには:議論
デジタル・ヒューマニティーズ入門 (S1+S2)
担当|大向 一輝 / ゲスト講師
日時|水曜日2限(10:25-12:10)
ゲスト講師による人文情報学の最先端の取り組みに関するオムニバス形式での講義。
2024年度シラバス(抜粋)
デジタル技術は、人類の知的資源の保存、研究、発信の方法を大きく変えて、情報社会の新しい知識基盤を形成している。この変化に対応すべく、デジタル媒体による学術資料のアーカイビング、文化コンテンツの分析、学術成果の公開や展示の方法などを、文系・理系の枠組みを横断して研究する「デジタル・ヒューマニティーズ」の動きが世界的に拡がっている。
本講義では、このような世界的な動向を踏まえて、デジタル技術を批判的に用いた「知」の形成をどのように実践していくか、大学院横断型教育プログラム「デジタル・ヒューマニティーズ」に関わる講師がオムニバス形式で講義を展開する。
一講義につき一人の講師が登壇し、各講師の研究テーマを中心に、様々なトピックを紹介していく。
主な講義内容としては、文化資源のアーカイブ構築、映像や音響の分析、知識の構造化や可視化の技術、デジタル・メディアによる表現や展示の方法、人文学における情報技術の活用などがあり、受講生がデジタル・ヒューマニティーズに関する基礎的な知識を習得することを目的とする。
応用科目
人文情報学研究Ⅰ (S1+S2)
担当|大向 一輝 / 高橋 晃一 / 永崎 研宣
日時|金曜日2限(10:25-12:10)
人文学のためのデータ構造化
本授業では、人文学がこれまで積み重ねてきたデジタル技術による暗黙知の明示的構造化の状況について理解する。次に、RDB、TEIガイドラインとその基盤技術であるXML、RDFの各技術を概説し、資料や知識を構造化する枠組みを習得する。これらにより、洋の東西や分野の違いを問わず、デジタル媒体を前提とした研究環境へと適切に対応するための基礎を涵養することを目指す。
2024年度シラバス(抜粋)
本授業では、まず、データの構造化の基本的な考え方について学び、表形式のデータを対象としたRDB、マークアップ言語として広く用いられているXMLの基本を習得した上で、TEIガイドラインの学習に進む。RDFに関しては、ウェブにおける知識表現の観点から基本的な考え方とその実際について学ぶ。
いずれの技術も他の技術・規格とも密接に関連しており、それらについては、受講生の関心に応じて適宜採り上げる。
また、構造化資料は視覚化技術と密接に結びついており、視覚化は構造化の意義を明らかにする手段の一つでもある。本授業においても、構造化の意義を確認することを目指し、簡便に活用可能ないくつかの視覚化手法を扱う。
イントロダクション:データの構造化とは
RDBの基礎(テーブル構造)
RDBの基礎(SQLなど)
RDBの応用・XMLの基礎(ツリー構造)
TEIの基礎(人文学テキストに必要な要素とその付与)
TEIの基礎(外部要素とのリンク)
TEIの応用(テキストの利活用)
XSLTの基礎(要素の指定と変換)
XSLTの応用(テキストの利活用)
RDFの基礎(グラフ構造・URI)
RDFの基礎(スキーマ・語彙・SPARQL)
RDFの応用(Linked Open Data・知識グラフ)
人文情報学研究Ⅱ (A1+A2)
担当|永崎 研宣
日時|金曜日2限(10:25-12:10)
人文学のためのテキスト構造化・可視化
Sセメスターの人文情報学研究Ⅰに続き、デジタル環境における人文学のためのテキスト資料の扱いに関する講義と実習を行い、デジタル媒体を前提とした研究環境へと適切に対応できるようになるための基礎を涵養することを目指す。
2024年度シラバス(抜粋)
本授業では、Sセメスターの人文情報学研究Ⅰで習得した人文学資料の構造化の概念を踏まえ、主にTEIガイドラインに関してテキスト資料のより深い構造化の理念と視点について理解することを目指し、講義と実習を行う。特に、校訂テキスト及び言語コーパスについては実例を通じた理解を目指すが、扱う事例はこれに限らず、受講生の関心にも可能な限り配慮する。
また、人文学のために構造化された資料を踏まえ、それを人文学の成果として視覚的に把握するための技術の実習を行う。可視化には静的・動的な手法が可能であり、受講生の関心の方向性に応じて注力する。そして、これを通じて、視覚的に把握することによる問題点や、視覚的な把握の困難さに対する配慮についての講義を実施する。
イントロダクション
テキスト構造化に関する各受講生の関心について(個人発表と討論)
書簡と地図・年表の紐付け
書簡と地図・年表の紐付け
書簡における固有表現の記述
構造化データの処理・分析
古典籍と写本情報の記述手法
古典籍と写本情報の記述手法
辞書の構造化
引用・注釈関係の構造化
構造化データの処理・分析
テキスト構造化に関する各受講生の取組みについて(個人発表と討論)
まとめ
人文情報学演習Ⅰ【ゼミ】 (S1+S2)
担当|大向 一輝
日時|月曜日4限(14:55-16:40)
個別の人文学研究に対するデジタル技術の組み込みについてゼミ形式で実践を行う。
2024年度シラバス(抜粋)
人文学研究に対する情報技術の導入にあたっては、各専門分野が受容可能な手続きが求められるとともに、情報学的に妥当な手法でなければならない。これまで人文情報学(Digital Humanities)の分野では両者を総合する議論が行われており、さまざまな知見が蓄積されてきた。一方で、個別具体の研究に対して情報技術が貢献可能な範囲やその方法はケースバイケースであり、事例ごとに詳細に検討すべきである。
本演習では、人文学の修士研究および博士研究に情報技術を取り入れることを希望する参加者同士で議論を行い、共通性の発見や知見の相互補完による課題解決の場を提供する。参加者が習得すべき技術については詳細に解説する。また関連分野の文献や技術のサーベイを通じて人文情報学の最新動向や方法論を把握し、個々の研究の遂行に役立てる。
技術の例:
テキスト構造化(XML・TEI)・テキストマイニング・自然言語処理
ネットワーク分析
知識の構造化(RDF・知識グラフ)
データベース・デジタルアーカイブ
マルチメディア・時空間情報処理
本授業の目的は人文情報学の観点からの修士研究・博士研究の支援であるが、希望者には中間目標として研究成果の一部を人文情報学関連の研究会あるいは学会にて発表できるよう論文指導を行う。
研究会・学会の例:
情報処理学会人文科学とコンピュータ研究会(年3回開催)
情報処理学会人文科学とコンピュータシンポジウム(年1回開催)
Japanese Association for Digital Humanities(年1回開催)
Digital Humanities(年1回開催)
人文情報学演習Ⅱ【ゼミ】 (A1+A2)
担当|大向 一輝
日時|月曜日4限(14:55-16:40)
個別の人文学研究に対するデジタル技術の組み込みについてゼミ形式で実践を行う。
2024年度シラバス(抜粋)
(Sセメスターの人文情報学演習Ⅰと同じ形式で実施します)
人文学研究に対する情報技術の導入にあたっては、各専門分野が受容可能な手続きが求められるとともに、情報学的に妥当な手法でなければならない。これまで人文情報学(Digital Humanities)の分野では両者を総合する議論が行われており、さまざまな知見が蓄積されてきた。一方で、個別具体の研究に対して情報技術が貢献可能な範囲やその方法はケースバイケースであり、事例ごとに詳細に検討すべきである。
本演習では、人文学の修士研究および博士研究に情報技術を取り入れることを希望する参加者同士で議論を行い、共通性の発見や知見の相互補完による課題解決の場を提供する。参加者が習得すべき技術については詳細に解説する。また関連分野の文献や技術のサーベイを通じて人文情報学の最新動向や方法論を把握し、個々の研究の遂行に役立てる。
技術の例:
テキスト構造化(XML・TEI)・テキストマイニング・自然言語処理
ネットワーク分析
知識の構造化(RDF・知識グラフ)
データベース・デジタルアーカイブ
マルチメディア・時空間情報処理
本授業の目的は人文情報学の観点からの修士研究・博士研究の支援であるが、希望者には中間目標として研究成果の一部を人文情報学関連の研究会あるいは学会にて発表できるよう論文指導を行う。
研究会・学会の例:
情報処理学会人文科学とコンピュータ研究会(年3回開催)
情報処理学会人文科学とコンピュータシンポジウム(年1回開催)
Japanese Association for Digital Humanities(年1回開催)
Digital Humanities(年1回開催)
言語研究のための情報処理 (S1+S2)
担当|小林 正人
日時|金曜日3限(13:00-14:45)
言語データの検索や分析、さらには言語学の論文作成に役立つ情報処理能力を、Pythonの課題によって習得することを目指す。
人文情報学の諸相 (A1+A2)
担当|中村 雄祐 / 小林 正人 / 高岸 輝 / 大向 一輝
日時|水曜日2限(10:25-12:10)
この授業では、人文社会系諸学における人文情報学的なアプローチの展開、そこでの課題や展望を、複数の専門分野の教員によるリレー形式で考える。本年度は、文化資源学、言語学、美術史学の3分野を取り上げる。
デジタル・ヒューマニティーズ教育プログラム
「デジタル・ヒューマニティーズ教育プログラム」は、東京大学の大学院横断型教育プログラムのひとつです。研究科の枠組みを超えて異なる分野の授業を履修し、所定の単位を修得すると、大学から正式な修了証が授与されます。詳しくは、デジタル・ヒューマニティーズ教育プログラムのページをご覧ください。